『新着メール1件』



商談が纏まらなかった夜の気分は最悪なものだ。
間の悪い事にジュードも学会でしばらく居ないときたら、憂さ晴らしに安酒でも煽りにいくしかない。
と、足を酒場に向けた矢先、胸ポケットで微かな振動。
画面を見ると愛しい子供からのメールが1件。
他愛ない内容に微笑みつつ帰路につくアルヴィンだった。



『ひねくれた告白』



自らの最奥を強引に穿つ熱とは裏腹に、触れてくる手の優しさに、ジュードはいつもダメとしか言えない。
本当はもっと触れてほしいけど、それ以上に自分が自分でなくなるような感覚が怖くて、ジュードは目の前の身体にしがみつく。
耳元で彼が囁いてくれる睦言を理解できるのはいつになるのだろうか。



『物仕掛けと色仕掛け』



差し出した乗車券は幻と言われている列車の物。
ジュードへの誕生日プレゼントではあるが、この少年は夢中になると、他の物が目に入らなくなるのがアルヴィンとしては少々面白くない。
もっと俺を見て欲しい。
そんな子供みたいな独占欲と共に、少年をソファーに押し倒し言う。

最高にイヤらしくお礼して?



『夢だけの世界』



昔、辛くて泣いていると、母さんが子守唄を唄ってくれて、俺はそれを聴きながら眠るのが好きで。
朝起きると俺を間に挟んで父さんも同じベッドで眠っているのが嬉しくて堪らなかった。
ゆるゆると目を開くと、目の前には蜂蜜色。
その瞳が綺麗な弧を描くのに小さな幸せを感じつつ俺は再度瞼を下ろした。



『逃がしはしない』



「は、なして...」
力無く身体を押し返してくる子供を、逃がさないと言わんばかりに抱擁の力を強める。
びくり、と子供の身体が跳ね上がるのは怖れかそれとも歓喜なのか。
出来れば後者であって欲しいと願いつつ、アルヴィンはジュードを更に強く腕の中に閉じ込めた。



『目を閉じて、三秒』



自分が寂しいなと思った時や、相手に甘えたいなと思った時に、然り気無く僕に甘えてくれるのは、
嬉しいの反面、自分の不器用さが居たたまれなくなってしまう事がよくある。
そんな時、決まって名前を呼んで彼をぎゅっとするのも彼には周知で。
瞳を閉じて僕を受け入れる彼との距離がゼロになるまで後少し。



『重なった偶然』



同時に同じ商品に手が伸びて、2人は間の抜けた声を出す。
取ろうとしたのはカレールゥの箱。
夕飯をじっくり作るには少々遅い時間。
久方振りに会う恋人と一緒のご飯を手軽に済ませるのは申し訳ないと思いつつも手が伸びてしまったその箱に彼の一言。

手の込んだご飯よりもジュードと一緒に過ごしたい、と



『本当、だったり。』



「アルヴィンの手って綺麗だよね」
唐突にそう呟くジュードに、アルヴィンは目をしばたかせる。
何せ銃の手入れ中で、油に汚れているから尚更だ。
「汚いだろ?」
色々な意味を込めて言えば、咎めるような眼差し。
「嘘じゃないよ。僕はこの、傷ついても逃げなかったり、汚れても頑張ってる手が大好き」



『サービストーク』



「ジュード疲れただろ? 肩揉む?」
「うん」
「お茶も淹れるなー」
「ありがと」
「お茶請けに果物も」
「う、うん」
ジュードは嬉しいので素直に頷いていたが、
「でな、最後がとっておきで。ジュードが凄く気持ち良くて安心する事も出来るけどどうする?」
最後の言で真っ赤になって俯くしか出来なかった。



『そう、全てが終わる前に』



一緒にご飯を食べて、お風呂でゆっくりして、ソファーで本を読んでいる隣にただ寄り添ってくれて、
寝る前にブランデーを一滴垂らしたミルクを一杯飲んでから、お休みとキスをして眠る。
叶うのならば、この幸せがずっと続けばいい。
そう毎日願いながら、僕は今日も彼に包まれ、ゆっくりと瞳を閉じた。



『全部全部、君のせい』



欺瞞策謀が日常の世界に、お人好しで騙される事も知らない無垢な子供が現れた。
慈しむような眼差しや温かい食事、大丈夫と抱き締めてくれる小さな腕。
そんな小さな事ばかりだけど、俺にとってはかけがえのないモノばかりで。
もう俺はお前が居ないと生きていけないんだ。
どう責任取ってくれる?ジュード





つい先日インフルにかかってしまいましてorz
深夜の高熱と止まらない咳のせいで眠れなかったので、twitter140字お題診断で文字書きしてました。
半分意識朦朧としていましたが、やっててすごく楽しかったですw
2014/04up