マシン・ソウル



 エスピナ城での宴はまだ宵の口・・・と言いつつも、年若い子供達ははしゃぎすぎて体力が尽きたらしく、すでに寝室へ行っている者も多い。
今残っているメンバーはいわゆる人外とうわばみのダメな大人連中ばかりである。
「アシェンちゃーん、楽しんでるぅ?」
そんな言葉と同時に、アシェンの肩にはずしりと『ヒト』の重みと温かみ。目線を横にずらすと、目の前には闇夜に染まる前の夕焼けのような深緋(くろあけ)が広がる。
「楽しんでました。・・・・・・が、赤ワカメのおかげで台無しです」
「またまたー、本当は嬉しいくせに素直じゃないんだから、アシェンちゃんは」
 肩の重みはなくなるどころか、更に重みを増すばかり。アシェンにとって人の重みが負担になる訳ではない。
 が、何故だかはわからないが、アクセルとの接触は必要以上に気力を消耗するので、アシェンとしては避けたい所であった。
アクセル本人もそんなアシェンの気持ちを察していたらしく、今まで必要以上に接触してくる事はなかったのだが、今日は執拗に絡んでくる。
 ただの酔っ払いの絡みだろうとアクセルに視線を見やると、そこには理性の光。

――違う。酔っ払いなどではない。

「・・・・・・何が、言いたい? アクセル・アルマー」
「話が早くて助かるなW07。・・・・・・いや、アシェン・ブレイデル。ついて来い」
 返事を待たずに踵を返すアクセルに、アシェンは素直につき従う。 抗う事も可能だっだが、何故だかわからないがそれをしてはいけない気がしたのだ。



「・・・・・・これ、は?」
 室内の喧騒から隔離されたバルコニーで、アクセルから無言で差し出されたのは小さなメモリーチップ。
「見るか見ないかはお前の意思で決めて構わない 」
「何故私に・・・・・・?」
 恐らくこれは己と艦長に関係するものに違いない。
 それは確信だった。そして、この男は私達にとっても縁深い人物なのだろう。
「ただの感傷だ」
「かん、しょう・・・?」
「そうだ。・・・・・・お前達Wシリーズは『兵器』として生み出されたのは間違いなく事実だ」
「だが・・・お前達の母親はお前達に、命令を実行して使い捨てられていく存在などではなく、自分の意志で生きて欲しい。そう願っていたのを覚えていて欲しかった」





アクセルがレモンさまの形見の品を持ってればいいなあって話。
2013/05up