蓮とキョーコ



「染め直さないといけない・・・・・・?」
「ええ・・・・・・。 監督さんがカツラだと浮くから、地毛で撮りたいと言われて・・・・・・」 そう言ってキョーコ仕様の茶色の髪先をつまみながら、彼女は少しだけ寂しそうに呟く。
美緒が『憑いている』時は何も感じなかったのであろう。だが今回の役どころは、よりにもよって以前の彼女を彷彿とさせるかのような物だ。
昔の思い出したくもないアレな事や、ソレな事を色々思い出すのだろう。彼女の表情はどことなく憂鬱そうだ。
今もまた、奴―――不破尚の事を思い出しているのだろう。
そう思うと、居ても立ってもいられないような感情が湧き上がってくる。

自らに『枷』を科した俺が言うのもお笑い種だが、育ってしまった『感情』を押さえつけることが出来なくなりつつあった。

そのもどかしさをどうにかしたくて少し手を伸ばすと、隣に座っている彼女の髪に手が繋った。
その柔らかい感触に――――気がおかしくなる。

「それは――――残念だな」

つい、とその毛先を引き寄せると彼女はぎょっとして固まってしまったが、俺はその衝動を止めることが出来ない。

「この髪型もとても似合っているのに」

そのままその毛先を自らの唇に重ね合わせた。






――――――その後数週間キョーコに避けに避けまくられ、マリアナ海溝の底よりどん底に落ち込む敦賀連の姿があったとかなかったとか。







懐かしいものを発掘。スキビはいいかげん蓮さんとキョーコちゃん早くくっついてしまえよ!と思うんですがね。
最近本誌読んでないので展開どうなってることやら・・・
2011/11up(初出08/05)